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ずっとずっと書きたかった!ようやく書けた!
これから増えていくかはまた謎ですが。(苦笑)
なぜか相手はスカイハイ。
おじさんじゃなくてスカイハイ。
15話で空が初恋!?とか予告で言うものだから、今の内に書いとかないと脳内フラグが折れる!!と、勢いで書きました。
内容はそんなに甘甘ではないです。はい。
よろしければどうぞ~
変換はカタカナ名前・苗字が対応しています。
その日、少年は決意した。
「僕も大きくなったら、ヒーローになってみんなを守る!」
そしてその隣で、----------------------------------彼女は決意した。
<君はナイチンゲール>
「キース・グッドマン」
トレーニングルームの入口で仁王立ちしている白衣の女性に、全員が目を向けた。
その女性の顔が不機嫌をあらわにしているのを見てとった面々は、二次被害にあわないように目をそむけ、各々のトレーニングに戻っていく。
「何か用かな?Msメランドリ」
その中でただ一人、彼女に呼ばれた人物------キースはいつものようにさわやかな笑顔を浮かべて軽快に近づいて行った。
既に眦を尖らせている彼女は、ますます視線に怒りが入り、その後ろに不可視のオーラが漂っている。
日本好きのイワンと虎鉄には、その様はまるで般若かに見えただろう。
「いい度胸だな。キース・グッドマン」
引く唸る彼女の指は、近づいたキースの耳を引っ張った。
「痛い・・・そして痛い・・・」と弱音を吐く彼を気にも止めず、彼女はそのまま耳を掴んでキースを連れていった。
2人、というよりも連れていかれた方をヒーロー達は同情の目で見送り、彼が心身共に無事で帰って来ることを願った。
唯一事態に追いついていないのは、新人であるバーナビーだ。
「今の人、ここのジムの顧問医師ですよね。どうしたんですか」
先程の彼女チヅル・メランドリはこのジムの勤務医である。
常に鍛えている彼らも、怪我や病気は、いくら気を付けてもなるときはなる。その際に素早く対応できるように医者が常勤しているのだ。
そのことは始めに紹介され、健康診断を行った時に知っていた。
初対面時の感情を表さない淡々とした印象とは打って変わって、今日の様子は以外だったバーナビーは、興味を露に一番近くにいる虎鉄に問い掛けた。
「ああ。そういやバニーちゃんはあんまり関わりなかったっけ」
「バーナビーです。 どういうことですか?」
バディの呟きに、バーナビーはしっかり訂正してからもう一度問いただす。
「あのドクター・メランドリにはな、体調に関してのごまかしはきかねえんだ」
医者なのだから身体の状態を見定めるのは得意分野なのだろう。
しかし、別の意味合いを感じ取って、バーナビーは問うように目を瞬かせる。次に答えたのはネイサンだ。
「なんでも、生き物の病気や怪我が見える能力らしいわよ」
「え、NEXTだったんですか!?」
その能力にも驚くが、NEXTだったという事実にも驚いた。
昨今、NEXTは人と共存しているが、実はヒーロー関係者中に現ヒーロー以外のNEXTはほとんどいない。
その為、こんな身近にいることにバーナビーは純粋に驚いた。
「ああ。俺たちの体調管理をパーフェクトに見てくれる。これ以上ない人だよ」
アントニオが頷き、そして何故かえもいわれぬ渋い顔になった。
よく見ると、周りのヒーロー全員が同じ顔をしている。
「ただし、恐ろしく怖い」
バーナビー以外の全員が口を揃えて締めくくった言葉に、バーナビーは一抹の不安を感じた。
「バニーちゃんも、ちょっとでも隠し事すると、後でとんでもねえ目にあうから、気をつけろ」
一体どのような事になるのか。
そして連れていかれたキングオブヒーローに、バーナビーは同情した。
そんな一同に勘ぐられているとはつゆ知らず、チヅルはカツカツとカルテを叩き、いつもよりのんびりとした様子のキースを睥睨していた。
「風邪だ。大馬鹿者が」
憤慨するチヅルは、体温計を消毒しつつ能力でキースを見た。
この能力は万能ではない。わかるのは部位とその度合いだけだ。
悪い部分に色がつき、軽いものから青、緑、黄、橙、赤、黒となり、更に色の濃さで治るか治らないかの度合いが見えるものだ。
連れ出した時は靄のような薄い緑と黄色を交互に変化させていたキースの体は、今はうすい黄緑色に固定されている。
重症ではないが、普段のトレーニングをさせるには無理な状態だ。
「私に隠せるとでも思っているのか」
こうなる前に連れ出せなかった自分が腹立たしいが、相手にも同じく憤りを感じている。
この男はいくら同じことを繰り返しても学習しない。
「そんなことはない。そうか、風邪だったのか。少し体が重いと思った」
素直に否定し、自分の状態を理解していなかったらしいとわかり、今度は呆れをこめて見つめる。
「なるほど。ただの大馬鹿者だったか」
「酷い。そして酷いなチヅル」
他の面々がいた時とは変わり、ファーストネームで呼んだキースに、チヅルは自然に受けとめ「本当のことだ」とすっぱり返した。
彼が名を呼ぶのは慣れている。2人は幼なじみだった。
昔からの付き合いのおかげでお互いの事はよくわかりあっている。
だからこそこういう時誰よりも苛立ちが募ることはわかってほしいのに、目の前の男はちっとも理解しようとしない。
それが彼の持ち味である天然のなせる技なのだろうが、チヅルは昔からこの天然には辟易し、キースの嫌いな部分の一つであった。
ぐちぐちと文句を並びたてる中、チヅルは内線で軽食を注文した後、キースへの薬とミネラルウォーター、水枕を用意した。
「少しここで休んで行きなさい。ここで薬を飲んだ後、自宅へ送るよう手配する」
「ありがとう。そしてありがとう」
キースにミネラルウォーターを飲ませた後、立ち上がり際の不安定な動作を介助できる位置で見て、しっかりとキースがベッドに横たわるまで傍に着く。
枕を水枕に変えて、ようやくチヅルの目つきは少し和らいだ。
それでもつり上がっているように見えるが、キースにはそれがチヅルが心配している表情だと知っている。
「私は貴方達ヒーローを全力でサポートする。そのことに誇りを持っている」
「ああ。だから私は迷うことなく戦うことができる」
この幼馴染の存在に、キースはいつでも救われていた。
子供の時も、そして、今も。
「・・・・キース」
柔らかくチヅルへ笑うキースに、チヅルは目を瞬かせた。
しかし、それは一瞬で元に戻り。
「早く寝たまえ。特大の針で栄養剤を打つぞ」
「それは勘弁!そして寝よう!」
幼馴染の本気が半分入った脅しに、キースはあわてて目をつむって寝ることに専念した。
幼いころに二人は決意した。
それは遊びの一環だったのかもしれないし、本当に本気で言った言葉だったのかもしれない。
このシュテルンビルドを守るヒーローたちのまねごとをして、そして少年は声高らかに言った。
「僕も大きくなったら、ヒーローになってみんなを守る!」
いっそ笑われそうなその言葉を、隣にいる少女は決して笑わなかった。
そして---------------------------------少女も決意した。
「なら私は、ヒーローの傷を治す医者になるわ」
end