生存報告と拍手返信兼、夢SS置き場。
SSは本編に絡んでいるようで絡んでない感じのもの。
案外ジャンル問わずなんでもありになってたりします。
増える増えないは気分次第です(笑)
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キスの日にちなんで、ちょっとした小話。
久しぶりに子供編です。
残念な感じです。
ごくん。と、喉が大きく鳴った。
もう少し飲み込むのが遅かったら、むせていたかもしれない。
どうしてだか理解できないまま、キラは目の前の光景に驚き、心臓がドキドキと鼓動していた。
それに気付いた母がチャンネルを変えたが、キラにはもう遅すぎた。
今も網膜に焼き付いてしまった光景は、キラの心臓を騒がせさせてしまう。
濃厚なキスシーンを目撃した衝撃を、幼いとはもう言えないが、そこそこにしか成熟していないキラは許容できずに持て余した。
(キス・・・してた)
恋愛ドラマの中のワンシーンは、キラにとって刺激が強すぎた。
キスが愛し合っている人同士が行うことだと、知識として知っている。
しかし現実に、夫婦である母と父は抱きしめあい、肩を寄せて寄り添うことはしても、キスやそれ以上を子供の前ですることはまったくなかった。
だからこそキラにとってそれは非日常であり、動揺してしまえるものだった。
(2人とも、すごくうっとりしてた・・・)
俳優2人の表情を反芻して、キラの鼓動がまたうるさくなる。
ませたクラスの女の子が、いつだったかキスの話で盛り上がっていたのを思い出して、盗み聞いたその拙い知識が頭の中で巡って、キラをまた動揺させた。
(どうしよう!どうしよう!)
子供であるがゆえに追いつかない感情に流されて、意味もなく挙動不審になるキラを止める人間はいない。
シンクにカップを置いたキラは、茹る頭を抱えたまま、自室に戻った。
外から漏れる街灯の光を頼りにベッドまでたどり着いて、セラの寝顔を見て少しだけ正気にもどった。
いや、ひょっとしたらまったく戻っていなかった。
すでにこの時点で自分の弟に対する愛情が逸脱していることに気がついていたキラに、無防備な弟の寝顔は暴走でうろたえることを通り越させ、一回転して冷静になっていた。
冷静に、弟のふくよかな唇を凝視していた。
――――キスってえ、すっごくきもちいいんだって~
――――初めてはレモンの味なんだってぇ
きゃあきゃあとイヤ~とか、やらしーとかそんなことを騒いではしゃいでいた女の子たちの言葉が、キラに好奇心を生み出した。
(本当・・・なのかな)
耳の後ろで、心臓がどくどくと騒いでいる。
弟はぐっすり寝ている。きっと何をしても気がつかないだろう。
なら、何をしても大丈夫。
まったく理屈にならない理屈をこねて、キラは弟へ顔を寄せた。
「いけーろーどれっどー とりぷるぎーあたーっく!!!」
「うっ!!!」
セラの右腕が動き、キラの頬に向かって容赦なく打ち込まれた。
「・・・・・」
「まいたかー むにゃうにゃ・・・」
口の中が痛い。血の味がするのと痛みとで、キラの涙腺は臨界点を超えた。
しくしくと泣きながら、キラは自分のベッドへあがる。
もうキラの中で奇妙な感情は消えていた。
それよりも理不尽に殴られたことのほうが悲しかった。
弟の寝相がお茶目だったことも知った日だった。
「・・・の・ばか・・・・」
心の中で弟をなじり。
「ぼくって・・・・ばか・・・」
自分もののしった。
キラ・ヤマト。
寝込みを襲うにはリスクを伴うと知った、ある日のことのはなし・・・
END
そうかんたんにうまくいかないのが人生ってものさ。
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